課税売上割合が著しく変動した場合の調整対象固定資産に係る消費税の調整というのがある。
その名の通り、消費税の調整をする。
消費税は所得に関係なく負担が生じるので賛成だという意見をたまに聞く。
原理的にはシンプルで、買い物をしたりと消費活動をすると税金を払い、その税金を受け取った人が最終的に消費税を納める。
ただ税理士の立場から消費税を見てみると全然シンプルではない。
いろいろなところに配慮したりした結果、複雑かつめんどくさいものになっている。
冒頭の課税売上割合が著しく変動した場合のというのもめんどくさいものの一つだ。
悪用する人が多い
消費税は、例えば個人商店主からすると、ものを売った際に受け取った消費税から、ものを仕入れた際に支払った消費税を差し引いて、その差額を消費税として税務署に納める。
当然、受け取った消費税よりも支払った消費税のほうが多い場合には還付が生じる。
これを利用した還付スキームというのが悪用の代表例だ。
最近だと金の無申告持ち込みによる悪用もある。
香港などの消費税がかからない国から金を持ち込んで、日本で消費税を上乗せして売却するというのが大まかな流れみたいだ。
先の還付スキームが方の抜け穴を突いているのに対して、金の方はそもそも税関に申告していない時点でアウトなので、なんというか、犯罪スレスレではなく、犯罪だ。
悪用を封じるごとに複雑になる
還付スキームについては長年問題視され、早い段階から封じるための改正がなされている。
ただし、その改正にも抜け穴があり、最近になりようやく穴が塞がれた感じがある。
これにより消費税はとても複雑になった。
課税売上割合が著しく変動した場合の調整対象固定資産にかかる消費税の調整は穴を防いだ成果であると同時に、複雑になった象徴でもある。
事業再生や組織再編などでは、タックスプランニングで消費税を軽視すると痛い目にあうことが多い。
金の方はインボイス方式が導入されると、密輸する意味がなくなるので、無効化されるはずだ。
配慮しすぎなのも問題
今回8%と10%で分けられるが、分けた結果それを処理する側の負担は増加する。
小規事業者への負担を配慮して簡易課税制度というのが導入されたり、今回の8%と10%の件でも簡易に処理する方法が導入されるが、あまり簡易ではない。
配慮した結果、どこかの負担がやはり重くなっている。
ということで悪用に対する改正に次ぐ改正や、誰に配慮したのかわからない拝領で、シンプルな仕組みとは程遠いものになっている。
近所シリーズ。
なぞの空間。